連載「イライラママを卒業したい!セーブ・ザ・チルドレンからの処方箋」より、14〜18歳の子どもの考え方・感じ方をピックアップしてお伝えします。
この時期の子どもの考え方や感じ方、そしてこの時期の親の困り事をを理解することで、イライラせずに課題を解決することを目指す記事です。
今回が本連載の最終回です。
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14〜18歳の子どもを理解する
ついに大人の一歩手前へ
思春期の子育ては難しいイメージがあるかもしれませんが、楽しい経験にもなるでしょう。
お子様はもう大人も同然で、あなたとたいがいの話題を語り合えます。新しいアイデアを考えたり、自分なりの理想を作り上げたり、自分の進路を定めたりもできます。
自分独自のアイデンティティ見つける
この時期の子どもは本当の自分を見つけるために、あらゆる可能性を試します。
この時期の子どもの最大の課題は自分独自のアイデンティティを見つけることです。
他の人から期待されている人物像ではなく、自分の本当の姿を表現したいという強い衝動があります。
この時期の育児の困りごと
自分独自のアイデンティティを見つけるために、急に好みや将来の計画を変えることがあります。自分を表現する手段として、下記のようなことについて急に好みを変え、親を困らせる事があるかもしれません。
- 音楽
- 服装
- 髪型
- 友だち
- 自分の信じること
- 食べ物の好み
- 学校外での活動
- 興味のある学問分野
- 将来の計画
この時期、親は時々不安に襲われます。我が子に教えてきたことが皆、水の泡になったと感じられるからです。
子どもは今、自分のアイデンティティの実験をしています。
どれが一番しっくり来るのか、答えを探すために色んなことを試します。その過程で、今までのやり方の一部を捨てさらなければならないのは当然、必要なことです。
親と真逆のアイデンティティを試す
特に親とはまったく違うアイデンティティを試す傾向があります。親の好みではない歌を聞いたり、好みでない服を着たり、親の賛同しない意見を持ったりします。親の歩んだ道とは違う方向を一度は試してみた方が、子どもは自分という人間がよりよくわかるものだそう。
親は、このような行動を「反抗的だ」と感じたり、自分と真逆の道を進もうとする我が子に「何をしでかすか…」と心配になるでしょう。
更に、若者は飲酒や喫煙を試してみようと考えることもあります。性行為や恋愛を試してみようと考えるかもしれません。
思春期の子どもは自分の身に災難が降りかかる可能性をなかなか考えません。妊娠、死んでしまう可能性も、まだ十分には理解していません。自分に困った事態が起きるはずがないと信じていたりするため、とても危険なことに手を伸ばす場合もあります。
この時期のイライラを解消しよう!
子どもが親である自分自身の歩んできた道と真逆の方向を目指したり、反対の考えを抱くことは親にとって不安の種に。さらに、飲酒や喫煙、性行為等リスクのあることにも手を出すのでは…とハラハラし、親の話を聞き入れない子にイライラすることがあるかもしれません。
こんなとき、これまで築いてきたお子様のあなたへの信頼感がこの上なく重要になります。
あなたになら、恐れることなく必要な情報やアドバイスが求められると知っておく必要があるのです。
子どもは管理されることは望んでいません。
でも、あなたがそこにいて、いつでも明確で嘘いつわりない情報を与え、期待と枠組みをはっきり示し、安全な環境を与えてくれるとわかっている必要があるのです。
小さい頃に色々なものを知ろうとして、時々怪我をしたのと同じように、人生を学びたいという新たな欲求はお子様に痛い思いをさせるかもしれません。
あなたは子どもが小さかった頃と同じように接すればいいのです。子どもの周囲を安全に保ち、子どもにとって役立つ情報を与え、その成長を支えます。
この段階で親ができることのうち、特に大切なのは以下のことです。
・親子の絆を強めること
・子どもがすることを見守ること
・子どもの自立を後押しすること
親子の絆を強めること
親子の絆の形成は、子どもが産まれた時からはじまりました。幼い頃に信頼と愛着を築き、成長と共にその絆を確かなものにすることで、あなたは10代の子どもを成人期へと送り出せる親子関係を作ってきました。
親子の絆が以下のようであれば、お子様は思春期をうまく乗り切るでしょう。
- 温もりと優しさ、そして愛情に満ちている
- 安定していて、揺れることなく、子どもにとってわかりやすい
管理や懲罰だらけの親子関係では親を避けたり、不安になりやすく、その不安や怒りを外にぶつけやすくなるでしょう。愛情を基盤にし、丁寧にわかりやすく接することで親子の絆を強化できます。
子どもがすることを見守る
この時期の子どもは「もっともっと自立したい」という欲求があり、枠組みを伝えることは難しくなります。とはいえ、親の導きが必要なことが多いのも事実です。この時に親のできることは子どもを導くための地図を示すこと。
目的地までの一番安全なルートや、危険な道を教えましょう。でも、どの方向に進むかは子どもが自分で決めることです。
親が子に地図を示し、安全なルートに導くために特に効果的なのが「見守る」という方法です。
「見守る」というのは子どもが何をしているかを把握しておくこと。それは必ず、子どものプライバシーと自立に対する欲求(この2つは子どもの持つ権利でもあります)を尊重する方法でなければなりません。
子どものすることに純粋な興味を持ったり
会話を増やしたり
子どもの友だちを含めておでかけをしたり
親子で共通の趣味を見つけたり…
明るく、たのしく、頻繁に子どもと関わり合う方法を見つけられれば、上手に見守ることができるでしょう。
親との関わる時間が、とげとげしく怒りや懲罰を伴うものではなく、楽しい時間であれば、親子の絆を強化し、上手に見守れるようになります。
子どもの自立を後押しする
親の支えのある安全な環境で、意思決定の技術を練習するよう子どもを応援できるチャンスは思春期が最後です。
親は知らず知らずのうちに
子どもの考え方を批判したり
親と意見が違う時に、子に罪悪感を感じさせたり
子どもが話そうとしている時に話題をかえたり…
子の自立を妨げてしまう時があります。
このような対応では、子は人として「自分など、ろくな考え方ができないし、ものごとをうまく決められない」と考えてしまうでしょう。
親は子どもを尊重し信頼していると示すことが、子どもの自立を後押しします。
- 親の考えと違っても、子どもの考え方は心から尊重する
- 子ども自身に価値観を持たせる
- 無条件の愛を示す
- 子どもと対等の立場で議論する
- 子は自分でものごとを決められ、その結果にも自分で対処できるはずだという親の信頼感を示す
- 失敗したときに、支える
- 互いの意見が違うとき、解決方法を話し合いで決める
上記のような方法で、子どもの自立を後押しすることができます。
最終回まとめ
連載【イライラママを卒業したい!セーブ・ザ・チルドレンからの処方箋】は、国際NGOセーブ・ザ・チルドレンが推奨している「手をあげたり、叱ったりではなく、でも、したい放題にさせるわけでもない“ポジティブ・ディシプリン”の子育て」を、筆者の育児や0歳〜高校生までの指導経験と絡めてご紹介しています。
子育ては○○であるべき!
親はこうあるべき!
といった「親べき論」ではなく、それぞれの親御さんの考えや文化・習慣を踏まえて、それぞれの子育ての目標をサポートする、主体的な内容が気に入っています。(もちろん筆者の好みだけでなく、背景にしっかりしたエビデンスがある点も評価できます)
イライラ…感情的になった時に助けてくれるのは他でもない、あなた自身の【子育ての目標】であり、それを成し遂げる為の具体的な方法が【温かさと枠組み】=愛情と、ルールを伝えること。しめすこと。
さらに、【お子様の現在の発達段階】を知り、その時々の子育ての課題を理解することで、イライラを未然に解消し、“子どもにこうなって欲しい大人”に自分自身を成長させる「育自論」であり、共に育む「共育論」でもあります。
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