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減数手術(減胎手術)とは?手術をめぐる課題や捉え方

このページでは三つ子出産の決意。マンガでわかる はじめての多胎育児 #7の補足として、「減数手術」について解説しております。

⚠減数(減胎)手術・中絶・胎児の死亡に関連する内容を含む記事です。ご注意下さい。

あらすじ

減数手術とは

双子や三つ子、四つ子など多胎児を妊娠した際、胎児の一部を子宮内で減らす手術を減数手術と言います。
(減胎手術と表記されることもあります)

多胎妊娠は母子共にリスクが高いため、その危険性を回避することや、多胎児を育成することが経済的に困難など事情のある家庭の負担を回避する目的で始められた手術です。

もし手術を受けるのであれば、妊娠12週未満までが推奨されます。

現在、日本でどの程度減数手術が行われているか、詳細な件数はわかっていません。
内容が内容だけに、表向き実施を公表していない医療機関も多く、また手術を受けた人も誰にも話せない方が多いです。

1996年に厚生省の「不妊治療のあり方に関する研究」で行なった調査によると、調査結果を得た195施設中、実施施設数は15施設、減数手術は87例ということでした。
実際はもっと多い可能性もあります。

手術をめぐる課題

法律の課題

妊娠12週未満までに妊娠を人工的に中断するという点においては中絶と同じですが、母体保護法において人工妊娠中絶とは
胎児が母体外において、生命を保続することができない時期に、人工的に、胎児及びその付属物を母体外に排出することをいう
と定義されています。

しかし減数手術は、胎児が亡くなった後も胎内に留まるため「母体外に排出する」という定義に当てはまりません。

そのため1993年、日本産婦人科医会1は「減数手術は母体保護法2上の人工妊娠中絶手術に該当せず、堕胎罪の適用を受ける可能性がある」との見解を公表していました。

しかしその後、不妊治療技術の向上と普及による多胎妊娠、特に四つ子以上の妊娠率が激増している状況を受け、法の定義を変更し手術を可能とするべきと見解を改め3、2003年には厚生労働省もやむを得ない場合は認め得るとしています。4

倫理的な課題

また、対象となる胎児の選び方をどうするのか、といった倫理的な問題もあります。
やむを得ず減数手術を実施する場合でも、障害の有無や性別を理由にして選別してはならないとしています。

危険性の課題

減数手術は、主に胎児の心臓に塩化カリウムを注入するという方法になります。
しかし誤って母体側に投与してしまったり、注射針からの感染症などで手術後に残された胎児まで亡くなってしまう可能性もあります。

2015年には、大阪で五つ子を妊娠した女性が、医師の提案により減数手術を受けましたが、手術後に残された胎児二人を流産する結果となり医院に損害賠償を求め訴訟を起こす事例がありました。5

第三の選択肢としての減数手術

湘南レディースクリニックの刈谷院長はYahoo!ニュースの記事の取材でこう答えています。
「人工中絶は断念だけど、減胎手術は選択。
 選ぶっていう過程があるぶん、どうしてもネガティブなイメージがつきまとう。

  (中略)
 ただ、選択肢の一つとして、やってますよと提示するぐらいはいいのかなと思ってます」6

多胎妊娠が増えた背景として、不妊治療技術の向上と普及があります。
「多胎妊娠の疫学」7によると、1995年の多胎児の出産率と1968年のそれとを比較すると双子は1.3倍、三つ子は4.7倍、四つ子は26.3倍と有意に増えています。

こうしたことから、現在の不妊治療では移植する受精卵の数は、原則として1個、35歳以上は2個(状況によっては3個)以内に制限するという
ガイドラインがあります。

前述のとおり、こうした対策を講じていたとしても多胎妊娠を完全に防ぐことは現代の医療技術では不可能であり、自然妊娠で三つ子以上を授かる方もいます。

特に四つ子以上では、母体の合併症罹患率は95%以上、胎児の後遺症発生率も三つ子以下と比べて3倍以上という調査結果があり、母子の健康を著しく損なうリスクがあります。

また、双子以上の妊娠でも、現代の育児環境の厳しさから複数人の子を同時に育てることが難しい家庭があることは紛れもない事実です。

こうした人たちにとって、刈谷院長のように全員を産むか、全員を諦めるかだけでなく、第三の選択肢を提示してくれる存在が救いになる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

手術をどう考えるべきか

こういった現状から日本産婦人科医会は母体保護法における人工妊娠中絶の定義を見直し、法のもとでの手術を可能とするべきと提言し、議論を進めています。

また同時に、不妊治療においてより一層多胎妊娠の発生防止に努め、安易に手術を実施する状況を回避しなければならないともしています。

しかし、こと育児環境の厳しさを理由に手術を選択するケースにおいては子どもを育てやすい福祉制度の仕組み作りや、社会全体で子どもを育てるという市民全員の意識改革によってその選択肢が消えていくことが理想であると、考えます。

  1. 当時は日本母性保護産婦人科医会 ↩︎
  2. 当時は優生保護法 ↩︎
  3. 提言 女性の権利を配慮した母体保護法改正点の問題点 – 多胎減数手術を含む – ↩︎
  4. 第26回 厚生科学審議会生殖補助医療部会 資料4「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書(案)」別紙3 多胎・減数手術について ↩︎
  5. 遠藤隆史.“五つ子減数手術、原告側の賠償請求を棄却 大阪地裁判決”.朝日新聞デジタル ↩︎
  6. Yahoo!ニュース“「断念」か「選択」か 胎児を減らす「減胎手術」の現場”より引用 ↩︎
  7. 平成8年度厚生省心身障害研究.今泉洋子 ↩︎

●参考文献
母体保護法等に関する検討委員会 答申 2024年6月14日参照

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この記事を書いた人

2016年生まれの双子男児と2019年生まれの三男を育児中。双子は双胎間輸血症候群により29週で出産、超低体重児でしたが健康にスクスク成長中♪ フルタイムワーママ。

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