我が家の双子は2歳を目前に身体に障がいがあることが分かりました。
多胎育児の支援不足は感じてきましたが、ハンデを抱える多胎児は更に支援がありません。
障がいや病気の人を知らないからこそ壁を感じたり、誤解が生じ、抵抗や怖いという気持ちになってしまうと感じています。
だからこそ知ってもらい、障がいや病気に対する壁や抵抗、怖さをなくてしいきたいです。
まずは知ってもらうことからはじめたいと思い、自身の経験を中心に「障がいを持つ多胎児との生活」について発信しています。
今回は障がいの理由が「脳性麻痺」ではなく、「進行性難病」と疑った経緯についてについてです。
前回のお話はこちら↓
〝脳性麻痺でしょう〟〝その可能性が高い〟
2歳のときに〝脳性麻痺〟と疑われ、脳と腰のMRI検査を終えた結果、決定的な所見は見られなかったものの〝脳性麻痺でしょう〟と診断が下りました。(詳しくは前回記事をご覧下さい↓)
当時〝脳性麻痺でしょう〟と診断したのは、出産した総合病院の小児科医でした。
「療育センターで早めにリハビリを開始したした方が良い」と勧められ、療育センターを紹介されました。
療育センターのリハビリ専門医も、紹介状やMRI検査の結果を確認。それぞれの足の状態を診察、問診も行い、初診を終えた結果、出産した病院の小児科医同様に〝脳性麻痺でしょう〟という見解でした。
その後もあちこちの小児科医、小児神経科医、リハビリ医の受診しましたが、どの医師も〝脳性麻痺の可能性が高い〟という答えは同じでした。
脳性麻痺ではないのではないか?
それでも「脳性麻痺ではないのではないか?」と疑う気持ちが消えなかったのは脳性麻痺は、脳のMRI検査に異常がうつることが多いが異常が全く見つからなかったことでした。
脳性麻痺はPVL(脳室周囲白質軟化症・脳の中の脳室周囲にある白質と呼ばれる神経繊維が行き来する構造に血液が行き渡らず、運動障害を起こす病気)のケースも多く、頭部のMRI検査で異常所見が確認できる場合が多いそう。
脳にまったく異常がうつっていないのに、本当に脳性麻痺といえるのか?
1歳くらいまで順調に発達成長し、10歩ほどは歩行ができていた期間があったことも引っかかり、「脳性麻痺ではない気がする・・・」という疑う気持ちが心の中にはありました。
とはいえ、どこを受診しても脳性麻痺だと言われるのだから、脳性麻痺と納得するしかないのだろう・・・という思いで日々を過ごしてきました。
先生方には、以下のように説明されていました。
- 原因不明の脳性麻痺も多く、PVLでなかったとしてもMRI検査に異常が見当たらないケースもある。
- 細胞レベルの損傷は、MRI検査ではうつらない。
- MRI検査に異常はなくても、身体の症状からすると脳性麻痺と思われる。
- 順調に歩行を開始するまでに成長してきたのに、急に歩けなくなった理由は運動量が増えたことによるもの。
(子どもが成長して全身を動かすようになると、身体全体の筋緊張も上がるため、足の筋緊張が高まって歩行困難になっていると思う)
どこの医師にも脳性麻痺だと診断され、ピンときたことが一つありました。
〝妊娠期間に補償制度に加入した覚えがある〟ということでした。
産科医療補償制度
その補償制度とは〝産科医療補償制度〟です。分娩機関の99%が加入しています。
みなさんも妊娠期間中に病院からすすめられて、加入されている方も多いのではないでしょうか?
重度の脳性麻痺の場合には、申請基準を満たすと〝産科医療補償制度〟に補償の申請することができます。
産科医療保障制度とは・・・
分娩に関連して発症した重度脳性まひのお子様とご家族の経済的負担を速やかに補償するとともに、原因分析を行い、同じような事例の再発防止に資する情報を提供するなどにより、紛争の防止・早期解決および産科医療の質の向上を図ることを目的とした制度。
産科医療補償制度の補償対象
下記の1〜3の基準をすべて満たす場合、補償対象となります。
- 【2014年12月31日までに出生したお子様の場合】
在胎週数33週以上で出生体重2000g以上、または在胎週数28週以上で所定の要件【2015年1月1日以降に出生したお子様の場合】
在胎週数32週以上で出生体重1400g以上、または在胎週数28週以上で所定の要件- 先天性や新生児期の要因によらない脳性まひ
- 身体障害者手帳1・2級相当の脳性まひ
※生後6ヶ月未満で亡くなられた場合は、補償対象とはなりません。
※2014年12月31日までに出生したお子様の場合と2015年1月1日以降に出生したお子様の場合では、在胎週数28週以上の「所定要件」が異なります。
我が家の双子の場合、2016年に33週6日で2人とも1500g以上はありました。なおかつ、身体障害者手帳2級。
「本当に脳性麻痺であるならば、この制度に申請できるのではないか?」と思い、出産した病院の担当小児科医に確認すると、「申請の対象になると思います」とのこと。
申請対象になるならば、申請してみたいと思いました。
もし対象になれば、原因究明もしてもらえますし、報告書が保護者と分娩機関に送付されます。「なぜ脳性麻痺になってしまったのか?」理由を知りたいと思う親御さんは多いのではないでしょうか。
また、補償対象になると補償金として一時金と分割金をあわせて総額3000万円が支払われます。
重度の脳性麻痺のお子さんの場合、福祉車両をはじめ、医療機器などなどかなりの負担があります。補償金が支払われることにより、家族の経済的負担を速やかに補償できるということです。補償金をお子さんの将来のために残しておきたいと思われるご家族もあるかもしれません。
我が家の双子のは申請基準を満たしていたため、申請をしてみることにしました。
産科医療保障制度の申請
産科医療保障制度の申請をするにあたって、必要な書類は多く、さらに医師が作成するのものはかなりの時間がかかりました。
書類を提出して、さらに数ヶ月が経過。
結果が郵送されてきました。
そして文面を読み、驚きました。
「お子様の脳性麻痺は、先天異常(家族性痙性対麻痺)によるものとの結論にいたりました」
脳性麻痺ではなかった!?衝撃と湧き上がる疑問
「脳性麻痺じゃないの!?家族性痙性麻痺ってなに!?」と思わず声をあげてしまいました。
今までに聞いたこともない病名であり、どこの病院の医師にも言われた覚えのない病名。
「家族性痙性対麻痺とは何か?」
とにかくそのことで頭がいっぱいになりました。
脳性麻痺と疑われたとき同様に、検索魔に。
申請書を書いてくださった医師に、そのことを報告するとかなり驚かれました。
その病気は遺伝子を調べなければ、本当に家族性痙性対麻痺かどうかはわからないので、子どもに特化した大きな病院に紹介してもらうことになりました。
大きな小児科専門病院を受診
大きな小児科専門病院の、小児神経科と遺伝科を受診しました。
初診を終え、「ほかの病気の可能性を排除するために、検査入院が必要」という理由から、検査入院を提案されました。
遺伝科へのハードルは高いようで、簡単には遺伝子検査はできませんでした。
検査入院では、より精度の高いMRI検査や、筋電図検査、眼科でも検査をしましたが異常なし。
「これだけ異常が見当たらない状態で、脳性麻痺という病名をつけるには押しが弱い」と小児神経科医からは伝えられました。
残るは、産科医療補償制度が結論付けた〝家族性痙性対麻痺〟しか予想できないため、遺伝子検査をしてもらえることになりました。
双子それぞれの採血と、わたしたち両親の採血の両方を遺伝子検査にまわしました。
遺伝子検査の結果は半年後。
原因が見つかっているか見つかっていないかはわからなくても、まずは半年後に報告とのこと。
見つかっていなければ、さらに遺伝子検査を続けるため、いつ結果がわかるかはわからないそうです。
一年後かもしれないし、5年後かもしれないし、何年、何十年待ってもわからないかもしれないと。
半年後、検査結果を聞きにいきました。
その半年間はとても不安でした。
原因がはっきり判明してほしいと思う気持ちはあるけれど、怖い気持ちもありました。
結果としては、異常が見つかり、産科医療補償制度が結論付けた〝家族性痙性対麻痺〟であることが判明しました。
家族性痙性対麻痺ともいいますが〝遺伝性痙性対麻痺(いでんせいけいせいついまひ)〟ともいいます。
遺伝科の報告書には〝遺伝性痙性対麻痺〟であると書かれていました。
病名の説明に関しては
- 進行性であり、難病申請できると思います
- 現時点で特別に知られている治療はありません
- 脳神経症状を伴うこともある(嚥下障害、構音障害)
- ジストニア(姿勢や動作時に筋緊張コントロールがうまくいかない)
とも書かれていました。
〝進行性難病〟だとわかったとき
〝進行性〟
〝難病〟
〝治療はない〟
という現実に、とてつもないショックを受けました。
今後、進行したらどうなってしまうのだろう・・・?と。
〝遺伝性痙性対麻痺(いでんせいけいせいついまひ)〟とは
遺伝性痙性対麻痺とは、神経難病。脊髄小脳変性症という難病の中のひとつです。
両足の筋肉のつっぱりや筋力低下などにより歩行障害をきたします。
この病気には様々な遺伝子変異のパターンがあるのですが、うちの双子と同じ変異は、まだ報告がない=国内未登録変異だそうです。
治療法はなく対症療法のみで、できることは、リハビリ、バクロフェン、ボトックス注射でした。
両足のつっぱりの影響で骨の変形などもあるため、足の腱を切るオペなども一生のうちに数回は必要になる可能性もあります。
これらは脳性麻痺に対する対症療法とほぼ同じです。
現在、遺伝性痙性対麻痺の患者さんは日本には約1500名ほどいると推測されているそうです。
構音障害といってうまく言葉を発音できなかったり、嚥下障害(食べ物をうまく飲み込めない)の可能性もあります。
その他、ジストニアの症状(目を開けていられない。声が出ない、震える。首が曲がる、傾く。字が書きにくい。体全身をうまくうごかせない、など)も可能性があるそうです。
原因は分かったが、受け止めるには大きすぎた
どこで診察を受けても〝脳性麻痺でしょう〟と言われてきて、「本当に脳性麻痺なの?」という疑問がずっとありました。
病名が違えば、予後が変わってきます。
だからこそ、分かるものならば曖昧にせず、病名をはっきりさせたいと思っていました。
遺伝子検査に踏み切ったことに後悔はなく、病名がはっきり判明したことは、素直に嬉しいです。
とはいえ〝進行性の難病である〟という事実は、大きすぎました。
上半身の症状がではじめたら、車いすも電動しか動かせなくなるでしょうとのお話もあり、医師からの説明を聞けば聞くほどに「悪化したら…?」「完全介護になるのでは?」と思い不安になりました。
今はまだ、上半身に酷い症状はありません。
それでも腕の硬さはあり、細かい動きは苦手です。
この腕の硬さも病気の影響です。
今は自分で車いすをこげます。とはいえこれから車いすを作成するのに、将来はそれすらできなくなってしまうのかも…と考えたら、ショックでたまりませんでした。
けれど、進行性とはいえ進行スピードは一律ではありません。
ゆっくり進行しても進行性。
急激に進行しても進行性。
そして双子の遺伝子変異パターンは未登録変異。
ということは、今後の体の状態は100%予測できるものではないということ。
1500名の患者さんがいる中で、すでに特定されているパターンの場合、その変異パターンにおける症状は似ています。
たとえばAパターン変異なら、こんな症状。Bパターン変異ならこんな症状、という具合に、変異の場所が少しでも違うだけで、かなり症状は違います。
おおまかに、足のつっぱりに関しては同じですが、それ以外の症状は個人差が大きいのです。
我が家の双子の場合は、現状、強い足のつっぱりで歩行困難。
腕の硬さもあり細かい動きは苦手。
理解力はあり、発語もしているけど発音が聞き取りづらい。
こういった症状はあるけれど、個人差が大きいから病名は同じでも将来のことはわかりません。
だからこそ
悲観しすぎず、今できることを前向きに取り組む!
というモットーにたどり着きました。
将来の悪化を考えたら怖い。
そして不安はキリがない。
将来を知ることなど、今はできない。
病名はわかったのだから、今後の参考にすることはできる。
様々な予後は知識としておきつつ〝ふたりの体の変化を見逃さないこと〟を大切にしたいと思うようになりました。
進行性難病の双子を育てるママの本音
「病気さえなかったら…」という気持ちは、未だにあります。
それでも。
目の前のツインズの笑顔を大切に、できることを前向きに。
家族で協力し、支えてくださる方々を大切に生きていきたいです。
それでも。
前向きになれず、泣いたり落ち込むこともちょくちょくあります。
悲しい気持ちに蓋はせず、否定もしません。
前向きだけではやっていられないのが現実です。
母親として子どもたちのために頑張りたい!という気持ちはもちろんあります。
それでも。
頑張れない時も多々あります。
頑張れない日があってもいい。泣いてもいい。
母は強しと言うけれど、母親は決して無敵ではないのです。
自分を責めすぎずに生きていきたい。
そう思っています。
障害受容のプロセス
「障害受容のプロセス」をご存知ですか?
障害を告知されてから受容へ至るまでには並大抵のことではありません。
わたしも、未だに障害受容へは至っていないと思います。
将来的に受容へ至るのかはわからないし、期待はしていません。
自分の心の中で、我が子の障がいに折り合いをつけながら生きている気がします。
告知のショック、その後の心の負担。
子どもの病気や障がいに対する社会の壁や支援の少なさ、理解の少なさなど、こんな現状に泣いているお母さんもたくさんいるのではないでしょうか?
子どもたちへの支援はもちろんのこと、お母さんたちの支援ももっと必要だと思っています。
知ってもらうことからはじめたい
だからこそ知っていただきたいです。
障がいのことや、その家族。社会の現状など…
知っていただいてこそ、多様性を認める・共生する社会に近づけると考えています。
障害児者にも生きやすい社会は、健常児者にも生きやすいと信じたいです。
一気に良くなることはないかもしれないけれど、少しずつ少しずつ、みんなが生きやすい日本になっていってほしいと、心から思います。
身体・精神・知的・発達などの障がいや病気、病名、その症状の程度に関わらず、もっと助け合える社会になりますように。
住む場所や病名、環境など様々な状況は違ったとしても、日々子どもと向き合い頑張っているお母さんたちのことも知っていただきたいのです。
我が子に病気や障がいがあるとぶつかる壁は多いですが、1人で悩み、抱える孤育てになりませんように。SNSでの情報発信が、少しでも誰かのお役に立てたら嬉しいなと思っています。(筆者インスタグラムへは下記プロフィールから飛べます)
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